②脱がさずにAEDを使用できるのか、本当の救命とは

良い資料がないか探していたところ、BLS横浜様が記事を書かれていたので、一部引用しつつ私見を交えて解説することにした。
最後に、「本当の救命とは」についても触れていこうと思う。
これは襟元からAEDパッドを差し込み、失敗した例

引用元:BLS横浜の記事
なぜこうなるのか、理由をいくつか挙げてみる。
① AEDパッドの粘着力
救命講習を受けたことのある人なら、「肌にしっかりAEDパッドを貼るように」と指導を受けたことがあると思う。
その中で、
「胸毛の濃い人にはAEDパッドを貼った後、勢いよく剥がして脱毛し、もう一枚の予備を貼る」
という指導を聞いたことがある人もいるのではないだろうか。
このくらい、AEDパッドの粘着力は強い。少しでも触れたらすぐにくっついてしまう。
襟元から差し込んで貼る場合、目的の場所以外に触れればパッドが折れて無駄になる可能性が高い。
② AEDパッドは大きく、重みがある
AEDパッドは大きくて重みがあるため、たわみやすい。
服の隙間から差し込んで貼るのは現実的ではなく、コードもついているので、
片手で服を引っ張りながら、たわむAEDパッドを貼るのは相当な技術が必要になる。
技術が必要ということは、再現性に乏しい手法ということになる。実際の緊急時に、誰もが同じようにできるとは限らない。
結論
服をずらして貼るのは再現性に乏しく、推奨できない。
ただ、AED財団がこのような資料を作成しているため、誤解を招きそうだ。

ゆるい服を着た女性なら対応できるかもしれないが、
自分なら、このような服でも前胸部を切る選択肢を取る。ブラジャーも切る。
その方が確実にAEDパッドを正しい位置に貼れるし、救命の成功率も上がる。
本当の救命とは
BLS横浜様は以下のように述べている。
しかし自分は違う、僕の考えを述べようと思う。

本当の救命とは「社会復帰」
心肺蘇生をすることだけが救命ではない。
その人を日常に戻すこと、それこそが本当の救命処置だと考えている。
プライバシーへの配慮を考えている余裕はない。だから、人が往来する道のど真ん中で胸部を晒す。
こういう意見もあるが、暴論だと感じる。
今の時代、誰もがスマホというカメラを持ち、全世界に発信できる。
もし心肺蘇生に成功しても、自身の裸体が世界中に拡散されたと知ったら?
それが原因で、社会復帰が困難になる可能性も十分にある。
では、どこまで配慮すべきか?
現場の状況によって異なるため、一概には言えない。
ただ、
他に人がいる場なら、手を借りて人垣を作る。悪意ある第三者から守る。
こうした行為はできるはずだ。
結果的に出来なかった時は仕方がないが、「人垣を作って」と声を出すことは出来る。
これまで積極的に指導してこなかったが、女性へのプライバシー配慮について聞かれたときは、
「個人的にはこう考えている」と前置きした上で、こうした講話をしていた。
救命処置とプライバシー保護、どちらも重要な課題として考えていく必要があると思う。
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