消防士から公務員(行政職)への転職、現実的なルートを整理した|受験区分と実務メリット
消防士も市役所の職員も、同じ公務員です。それでも「消防士から公務員に転職」で検索する人が多いのは、消防の仕事と行政事務の仕事があまりに違うからだと思います。
僕は元消防士として15年働き、その後市役所勤務も経験しました。消防の勤務を続けながら市役所の採用試験を受けて、合格しています。
この記事では、消防士(消防吏員)から市役所などの行政事務職へ移りたい人に向けて、現実的な選択肢を整理します。取り上げるのは、受験区分の選択肢、公務員間の転職ならではの実務メリット、そして働きながら受験するときの注意点です。
この記事でわかること
- 消防士から行政職公務員へ移るときの、受験区分の選択肢
- 退職金・保険まわりで、公務員間転職ならではのメリット
- 働きながら受験するときに気をつけたいこと
受験区分の選択肢を整理する
消防士から市役所などの行政事務職へ移る場合、主に2つのルートがあります。
1つは「経験者採用(社会人枠)」です。民間企業等での勤務経験を条件にしている自治体が多いのですが、公務員としての勤務経験を対象に含める自治体もあります。正社員でなくても、条件を満たせば受験できるケースもあります。消防士としての経験がそのまま活かせるかどうかは自治体ごとに違うため、募集要項の受験資格欄は必ず確認してください。
出典:社会人経験者採用(地方公務員)|公務員試験総合ガイド(2026年7月時点)
もう1つは「一般採用(大卒程度など)」です。こちらは年齢要件だけで受けられますが、専門試験が課されることが多く、勉強する範囲は広がります。年齢の上限に余裕があるなら、経験者採用と並行して視野に入れておく価値があります。
出典:アガルート 公務員に転職するには?(2026年7月時点)
どちらのルートを選ぶにしても、試験内容と受験資格を自分の目で確認することが出発点になります。特に経験者採用は、自治体ごとに求める勤務年数や年齢の範囲がかなり違います。同じ「経験者採用」という名前でも、中身は自治体によって別物だと考えておいたほうが安全です。
消防士としての経験は、どう評価されるのか
消防士(消防吏員)も地方公務員なので、行政事務職とは職種が違っても、同じ公務員という立場です。そのため、経験者採用の応募資格を「民間企業等」に限定している自治体では、消防士としての経験がそのまま条件を満たすとは限りません。
一方で、公務員としての勤務経験を対象に含めている自治体や、消防・警察などの現場経験を積極的に評価する自治体もあります。募集要項の「受験資格」「対象となる職務経験」の欄を、自分の経験と照らし合わせて読み込むことが欠かせません。
不明な点があれば、応募前に人事担当へ問い合わせてしまうのが確実です。曖昧なまま出願して資格不足で無効になるより、事前確認のほうがずっと安全です。
公務員間の転職だからこそのメリット

消防士から行政職へ移る場合、いわゆる「公務員から公務員への転職」になります。民間から公務員への転職にはない、実務上のメリットがいくつかあります。
退職金は「引き継ぐ」という選択肢がある
退職手当(いわゆる退職金)には、退職後すぐに次の地方公共団体の職員として採用されると、支給されずにそのまま勤続年数として通算される仕組みがあります。国や他の地方公務員から1日も空くことなく引き続き職員になった場合には、その期間が通算されると説明されています。
出典:退職手当制度について|東京都市町村職員退職手当組合(2026年7月時点)
僕自身、退職金を「受け取る」か「次の職場に引き継ぐ」か選べる場面があり、引き継ぐ方を選びました。約350万円の退職金は、そのときは受け取らず、勤続年数の通算にまわしています。
失業期間がゼロになる
僕は3月末で消防を退職し、4月から市役所に入庁したので、失業していた期間はありません。公務員はもともと雇用保険の対象外で、その代わりに退職手当が失業給付に相当する役割を果たすとされています。退職と採用のタイミングを合わせられれば、収入が途切れる不安を減らせます。
出典:公務員は失業保険をもらえない?(2026年7月時点)
健康保険は共済組合の間で引き継がれる
公務員の健康保険は、共済組合が運営しています。転職前と転職後、両方とも共済組合の対象になる場合、元の組合員資格を失うと同時に、新しい共済組合の組合員資格を取得する「転入」という扱いになります。
出典:他の共済組合から転入された場合|公立学校共済組合富山支部(2026年7月時点)
僕の場合も、健康保険は共済組合の間で自動的に引き継がれ、自分で行った引き継ぎの実務はほとんどありませんでした。手続きの詳細は共済組合や自治体によって違う可能性があるので、退職前に人事担当へ確認しておくと安心です。
働きながら受験するときに気をつけたいこと
注意
在職中の受験は、試験日程と勤務シフトの調整が欠かせません。また、受験先から在職先へ連絡が入る場合もあります。扱いは自治体や状況で異なるため、「隠し通せる」前提では動かないほうが安全です。
消防士は交代制勤務が多く、一般的な会社員のような平日・休日の感覚では動けません。休みの日も出動の招集に備えて、スマホを枕元に置いて眠るような生活をしている人も多いはずです。
そういう働き方のなかで受験するなら、試験日程と勤務のシフトを早めにすり合わせておくことが欠かせません。一次試験・二次試験の日程が非番や休みと重なるかどうかは、募集要項が出た時点で確認しておきましょう。
職場への伝え方も、悩む人が多い部分だと思います。僕の場合、親しい同僚には受験前から話していましたが、署長など上層部に伝えたのは合格したあとでした。受験先の自治体から在職先へ連絡が入ることがあるため、いずれは職場に伝わるだろうという前提で動いていました。これはあくまで僕の職場でのケースです。自治体や状況によって扱いは異なるので、隠し通せる前提で動かないほうが安全です。
僕自身は、受ける自治体を1つに絞り、併願をしませんでした。範囲を絞ったぶん、限られた時間を分散させずに済んだという実感があります。もちろんこれは僕の選び方であって、複数の自治体を併願する選択肢を否定するものではありません。
実際、公務員試験では併願する人のほうが多いとも言われています。面接で併願状況を聞かれた場合は、3〜4つ程度に絞って正直に答えるのが一般的なようです。
出典:公務員試験は併願が常識!(2026年7月時点)
1つに絞るか、複数を併願するかは、確保できる時間と相談して決めるのがよさそうです。時間が限られているなら、僕のように1つに絞る戦略も選択肢に入ってきます。
対策の進め方に不安がある場合は、独学だけにこだわらず、経験者採用向けのサポートが手厚い予備校を検討する手もあります。
▶ 関連記事:アガルート公務員講座の評判を調査した|料金・内定実績・口コミの中身
よくある質問
Q. 消防士のままでも、市役所の採用試験を受けられますか? はい。在職中でも受験できる自治体がほとんどです。ただし試験日程と勤務シフトの調整は自分で行う必要があります。
Q. 経験者採用と一般採用、どちらで消防士からの転職に向いていますか? 自治体の受験資格を満たせるなら、専門試験がなく学習範囲が絞りやすい経験者採用のほうが、働きながらの対策とは相性がよい傾向があります。ただし年齢や勤務経験の要件を満たさない場合は、一般採用も選択肢になります。
Q. 退職金の通算は、必ず自動で行われますか? いいえ。通算されるのは、退職後すぐに次の職員として採用され、間が空かない場合が原則です。取り扱いは自治体の条例によって違うため、事前に人事担当へ確認しておくと安心です。
Q. 消防士としての経験は、面接でどう伝えればいいですか? 現場で培った体力・判断力・チームワークなどを、行政の仕事でどう活かせるかという形で伝えるのが基本です。具体的な伝え方は、別記事の面接対策でもう少し詳しく扱う予定です。
おわりに
消防士から行政職公務員への転職は、同じ公務員だからこそのメリットが確かにあります。退職金の通算、失業期間ゼロ、保険の引き継ぎ。知っているかどうかで、不安の大きさが変わってくる部分だと思います。
まずは、自分が気になっている自治体の受験区分と、退職金・保険の扱いを確認するところから始めてみてください。勉強時間の作り方や独学のロードマップも、あわせて参考にしてもらえたらうれしいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。あなたの次の一歩が、少しでも見通しやすくなりますように。
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