公務員として働いた年数は、経験者採用の職務経験に入るのか。67自治体の受験案内で「公務員」の扱いを読み比べました
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「民間企業等における職務経験」。受験案内にはたいてい、こう書いてあります。
いま公務員として働いている人が別の自治体を受けようとすると、この「等」に自分が入るのかどうかで、最初に止まります。
消防で15年働き、そのあと市役所へ移りました。暴力が「指導」と呼ばれる職場を、中から訴え続けても変えられなかった。だから外から変えるために市役所へ行きました。まだ途中です。消防で働いた年数を、社会人枠の職務経験として出願した側でもあります。
全国67自治体の受験案内を1件ずつ開いて、公務員の経験がどう扱われているかを文面で確かめました。読み比べると、扱いは3つに分かれていました。
先に、結論を3つ
- 「公務員」を職務経験に数えると案内に書いている自治体が8つあります。会社員・自営業と並べて数える形です
- 民間の枠とは別に「公務員経験者」の枠を持つ自治体が10あります。国・都道府県・政令市に絞る自治体もあれば、市町村の職員まで含める自治体もあり、必要な年数は3年から9年まで開きがあります
- 正規の公務員経験を数えない自治体もあります。秋田県は、国と地方公共団体の正規職員としての経験を職務経験に含めていません
1. 「公務員」を職務経験に含めると明記している8自治体
案内の文面に、公務員の語がそのまま入っている自治体です。7つは職務経験の定義の文に、川崎市は試験区分の名前に入っています。この場合、他の自治体で正規職員として働いた年数は、会社員と同じ扱いで数えられます。
| 自治体 | 案内の書き方 | 年数の数え方 |
|---|---|---|
| 名古屋市 | 会社員、自営業者、公務員等として同一の事業所に週30時間以上 | 1年以上継続した期間を通算(直近10年中に5年以上) |
| 富山県 | 民間企業の従業員・自営業者・公務員等として週30時間以上 | 6か月以上継続した期間を通算 |
| 岐阜県 | 会社員・自営業・公務員・各種法人等で週29時間以上 | 1年以上継続した期間を通算(休職期間は除く) |
| 京都市 | 雇用形態にかかわらず会社員・団体職員・公務員・自営業者等が該当。週30時間以上 | 1年以上継続した期間を通算(直近7年中に5年以上) |
| 岡山市 | 正社員・派遣・契約・パート・アルバイト・自営業者・公務員・団体職員等、雇用形態を問わない | 直近5年中に3年以上。週30時間以上で2年以上続いた期間が対象 |
| 熊本県 | 会社員、公務員、団体職員、自営業者等として週30時間以上 | 1年以上継続した期間 |
| 鹿児島県 | 会社員・団体職員・自営業者・公務員等として1年以上継続 | 1か月未満の月は切り捨てて通算 |
| 川崎市 | 区分の名前が「民間企業等職務経験者(公務員経験を含む)」 | 案内の年数要件どおり |
川崎市は分かりやすくて、試験区分の名前に「公務員経験を含む」と入っています。京都市と岡山市は、雇用形態を問わないと書いたうえで公務員も列挙しています。
ここに入っている自治体なら、迷う必要はありません。今の勤め先が役所であっても、年数はそのまま数えられます。
なお、公務員の語を使わず「国・地方公共団体等」「公的機関」と書いている自治体もあります(茨城県・千葉県・佐賀県・長崎県など)。公務員の経験を数える趣旨のことが多いのですが、対象や条件の書き方が案内ごとに違うので、この表には入れていません。
2. 民間の枠とは別に「公務員経験者」の枠を持つ10自治体
こちらは、民間企業等の経験者向けの枠とは別に、公務員として働いた人だけを対象にした枠を置いている自治体です。枠が分かれているので、どちらで受けるかを自分で選ぶことになります。
| 自治体 | 枠の名前 | 対象になる勤務先 | 必要な年数 |
|---|---|---|---|
| 岩手県 | 都道府県等職務経験者 | 国・都道府県・政令指定都市 | 案内で確認 |
| 宮城県 | 行政実務経験者(主任主査級) | 国・都道府県・政令指定都市 | 直近16年中9年以上(令和7年度実施要項) |
| 新潟県 | 一般行政(行政実務経験枠) | 国・地方公共団体(任期の定めのない正規職員) | 3年以上 |
| 北九州市 | 行政Ⅱ(行政経験) | 国・地方公共団体 | 通算5年以上 |
| 奈良県 | 公務員経験者試験 | 国・都道府県・政令指定都市 | 7年以上 |
| 愛媛県 | 公務員経験者(行政事務) | 国・都道府県・人口15万人以上の市・特別区 | 3年以上 |
| 徳島県 | 行政実務経験者採用 | 国・都道府県等 | 3年以上、かつ退職後10年以内 |
| 大分県 | 行政実務経験者 | 国・地方公務員 | 5年以上 |
| 大阪府 | 公務員経験者採用 | 他の自治体等 | 案内で確認 |
| 名古屋市 | 行政実務経験者採用選考 | 公務員経験者向け | 案内で確認 |
この10は、一般行政・事務の枠に限って数えています。神奈川県にも公務員経験者向けの「経験者選考」がありますが、土木・電気などの技術職だけが対象なので、この表には入れていません。
岩手県と宮城県は、民間からの転職者に開かれた一般事務の枠がありません。民間から受けたい人には門が無い一方で、公務員から動く人には、ここが入口になります。
年数の条件は自治体ごとにかなり違います。新潟県・愛媛県・徳島県は3年、北九州市・大分県は5年、奈良県は7年、宮城県は直近16年中9年です。
見落としやすいのは、対象になる勤務先の範囲です。岩手県と宮城県と奈良県は、国・都道府県・政令市に限っています。愛媛県はもう少し広く、そこに人口15万人以上の市と特別区が入ります。一方で新潟県・北九州市・大分県は「地方公共団体」としているので、規模を問わず市町村の職員も対象です。
一般の市役所や町村役場から動く人は、この一行で入れる枠と入れない枠が分かれます。自分の勤め先の種類を先に当てはめてください。
3. 正規の公務員経験を数えない自治体。秋田県の場合
秋田県の職務経験者枠(行政)は、対象を会社員・団体職員・自営業者・国や地方公共団体の非常勤職員などとしています。そのうえで、国・地方公共団体の正規職員としての経験は含まないと明記しています。
さらに、秋田県職員と県内の地方公共団体の正規職員は、この枠を受験できません。年数の問題ではなく、受験資格そのものがない形です。
ただし同じ秋田県でも、教育行政の区分は正規の公務員経験も算入できます。同じ自治体の中で区分によって扱いが変わるので、自分が受ける区分の文面を見る必要があります。
67自治体の中で、公務員経験の扱いがいちばん厳しいのがここでした。非常勤の経験は数えるのに、正規の経験は数えない。公務員から公務員へ動く人を、民間枠には入れない設計です。
4. 案内のどこを読めば、自分の枠が決まるか
3つのグループを見たうえで、自分の案内を読むときの順番です。
1. 「職務経験」の定義の文を探す。 受験資格の表の下か、注釈の中にあります。「会社員、自営業者等として」の列挙に、公務員の語がそのまま入っていれば1のグループです。「国・地方公共団体」「公的機関」「官公庁」という書き方でも、公務員の年数を数える趣旨のことがあります。1の表は公務員の語がある自治体だけを載せているので、表に無い=数えないという意味ではありません。この書き方だった場合は、手順4に進んでください。
2. 試験区分の一覧に、別の枠がないかを見る。 「行政実務経験者」「公務員経験者」「都道府県等職務経験者」という名前の区分が並んでいたら、2のグループです。この場合、民間枠のほうに「公務員経験を除く」と書かれていることがあります。
3. 枠が2つあるなら、年数と勤務先で比べる。 奈良県は民間枠の年数に定めがなく、公務員枠は7年です。愛媛県は民間枠が5年、公務員枠が3年です。同じ自治体でも、どちらの枠が広いかは逆になります。年数だけでなく、年齢上限と試験の方式も枠ごとに違うので、両方の案内を並べて見てください。
4. どこにも書いていなければ、人事委員会に聞く。 「民間企業等」の「等」に公務員が入るかどうかは、文面から読めない自治体が多いです。ここは推測しないでください。電話かメールで、勤務先の種類と年数を伝えて確認するのがいちばん早いです。
この記事に載せていない自治体は、案内に明記がなかったか、僕の確認で拾えていないかのどちらかです。載っていないことを「数えない」と読まないでください。
▶ 年数の数え方そのものは、経験者採用の職務経験年数で62自治体を集計しました。 ▶ 非正規の職歴が給料の職歴加算でどう扱われるかは、民間から公務員になると給料は下がるかに書いています。
在職中に受けるときの、もうひとつの確認
公務員から公務員へ動く場合も、受験先の自治体から今の職場へ在職照会の連絡が入ることがあります。いつ、誰に伝えるかは、受ける前に決めておいたほうがいい部分です。
僕は、親しい人には受ける前から伝えて、上層部には受かった後に伝えました。受験先から連絡が入る場合があると聞いていたので、いずれ伝わると思っていたからです。順番を先に決めておくと、慌てずに済みます。
▶ 伝える順番の作り方は、在職中の公務員試験はバレるかで整理しています。 ▶ 年齢の上限が気になる方は40代で外れる自治体はどこか、次の締切を探している方は落ちたら次はどこかをどうぞ。
この集計の前提
- 対象は、当ブログが受験資格データを収集している全国67自治体(都道府県・政令市)の社会人枠・経験者採用です
- この記事は件数の集計ではなく、案内の文面の読み比べです。当ブログの集計記事は母数を62自治体(一般事務・行政の枠がある自治体)にそろえています
- この記事は公務員経験者だけの枠も対象にするため、67自治体すべての案内を見ています。他の記事の数字と足し引きしないでください
- 各自治体が公表している令和8年度(2026年度)の受験案内を、2026年8月に1件ずつ開いて確認しました。名古屋市だけは9月1日公表の案内で差し替えています
- 宮城県の年数条件は令和7年度の実施要項によります。岩手県は令和8年度の実施要項が公開されていないため、県の職員募集案内のページで確認しました
- 表に載せた文面は案内の要約で、原文どおりではありません。出願前に必ず原文をご確認ください
- 年数・年齢・方式は年度で変わります
おわりに
公務員から公務員へ動くことを、後ろめたく感じる人がいます。
でも受験案内を67件読んでみると、公務員経験者のための枠をわざわざ用意している自治体が10もありました。行政の中で働いた年数を、そのまま力として見ている自治体があるということです。僕も、消防の年数を職務経験として出して、通りました。動くこと自体は、制度の側が想定している道です。
あなたの案内には、「等」の中身が書いてありましたか。それとも、これから聞きますか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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