経験者採用に数的推理は必要か。67自治体の受験案内を全部開いて調べました
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「公務員試験を受けるなら、まず数的推理から」と、あちこちに書いてあります。
でも社会人枠・経験者採用を受ける人にとって、それは本当でしょうか。全国67自治体の令和8年度の受験案内を1件ずつ開いて、第1次試験が実際にどんな方式なのかを調べました。
先に、調べた結果
- 従来型の教養試験を課すのは、6自治体だけでした(令和8年度に一般事務・行政の枠があった62自治体のうち)
- 残りの82%はSPI3・SCOA・BEST-Aといった適性検査型です
- さらに5自治体は、第1次に筆記試験そのものがありません(書類または論文だけ)
つまり「数的推理の分厚い問題集を1冊やり込む」対策が必要なのは、志望先が6自治体に入っている場合だけです。それ以外の人は、やるべきことがまったく違います。
67自治体ぶんの結論
- 事務の枠がある62自治体のうち、従来型の教養試験は6件だけ
- 82%(51件)はSPI3・SCOA・BEST-Aなどの適性検査型。分厚い数的推理の問題集は不要
- 埼玉・新潟・佐賀・香川・神奈川の5自治体は書類・論文だけ。時間は職務経歴書へ
67自治体の第1次試験。8割が適性検査型でした
67自治体すべての受験案内を開いたうえで、令和8年度に一般事務・行政の枠があった62自治体を集計しました。岩手県・静岡県・京都府・沖縄県・宮城県は、令和8年度は技術職や公務員経験者向けの募集のみで事務の枠がありませんでした。割合は四捨五入しています。
| 第1次試験の方式 | 自治体数 | 割合 |
|---|---|---|
| SPI3 | 36件 | 58% |
| SCOA | 9件 | 15% |
| BEST-A | 3件 | 5% |
| 独自の適性検査 | 3件 | 5% |
| 従来型の教養試験 | 6件 | 10% |
| 書類選考のみ | 4件 | 6% |
| 論文のみ | 1件 | 2% |
適性検査型(SPI3・SCOA・BEST-A・独自)を合計すると51件で、全体の82%になります。
社会人枠が「特別な公務員試験対策をしなくても受けられる」方向に舵を切っているのは、案内の文面からも読み取れました。宮城県は「特別な公務員試験対策をしなくても、現在の職場等で培った知識・能力で受考できます」と明記しています。岐阜県も「第1次選考は特別な対策が不要な職務能力試験BEST-Aです」と書いています。
従来型の教養試験を課す6自治体
数的推理の対策が本当に必要になるのは、次の6つです。
| 自治体 | 試験の内容 |
|---|---|
| 特別区(東京23区) | 五肢択一・45題中35題解答・1時間45分 |
| 千葉市 | 択一式・50問全問解答・150分(短大卒業程度) |
| 仙台市 | 五肢択一・40問・120分 |
| 愛知県 | 択一式・40題・2時間 |
| 川崎市 | 択一式・40問・120分 |
| 浜松市 | 択一式・40題・120分(事務は学校事務のみ) |
この6件は、いずれも文章理解・判断推理・数的推理・資料解釈という従来どおりの構成です。特別区については、公式の問題冊子を2年分数えて、数的処理が実際に何問出るかを別の記事に書きました。
▶ 特別区経験者採用の数的処理は16問。公式の問題冊子を2年分、1問ずつ数えました
川崎市は、この教養試験の成績上位者だけが面談試験に進む2段階方式でした。教養が足切りとして機能するので、6自治体の中でも筆記の比重が重いほうです。
適性検査型でも、数的の力は使います
ここ、けっこう誤解されているんです。
SPI3もSCOAもBEST-Aも、数的な問題は出ます。出ないのは「公務員試験専用の、あの分厚い数的推理」のほうです。
| 方式 | 数的まわりの中身 |
|---|---|
| SPI3 | 非言語分野。速さ・割合・損益算・推論・図表の読み取りなど |
| SCOA | 数理。四則計算・方程式・数列。加えて言語・論理・常識・英語の5分野 |
| BEST-A | 職務能力試験。論理的に思考する力、資料を分析する力を問う択一式 |
| 独自の適性検査 | 岡山県は60問で1時間前後。中身の説明はBEST-Aとほぼ同じ |
違いは難易度と守備範囲です。公務員試験の数的推理は、整数問題や図形、暗号など、専用の解法を覚えないと手が出ない問題が並びます。一方SPI3の非言語は、民間就活生が数週間で仕上げる範囲です。時間あたりの処理速度は問われますが、覚えるべき解法の量が違います。
僕自身、本命の試験は教養試験でしたが、使ったのは『これが本当のSPI3だ!』1冊でした。出題内容が重なるので、そのまま練習になりました。逆にいえば、SPI3の対策本1冊で足りる試験に、公務員試験用の問題集を積み上げる必要はありません。
志望先の決め方で、やることが変わります
対策の順番は、志望先の方式が決まってから。
まだ志望先を絞っていない場合。 数的推理の問題集を買う前に、受けられる自治体を先に確認してください。8割はSPI3かSCOAなので、市販のSPI3対策本1冊から始めるほうが、無駄になる確率が低いです。
志望先が適性検査型(SPI3・SCOA・BEST-A・独自)の場合。 その方式の市販本を1冊、繰り返してください。BEST-Aと独自の適性検査は市販の対策本がほとんどありませんが、案内に「特別な対策は不要」と書かれているとおり、SPI3の非言語で代用できる範囲です。
志望先が従来型の6自治体の場合。 ここで初めて、公務員試験用の数的処理の問題集が必要になります。特別区なら、数的処理は16問で必須30問の半分以上を占めます。
志望先が書類・論文だけの5自治体(埼玉県・新潟県・佐賀県・香川県・神奈川県)の場合。 筆記対策より、職務経歴書と論文に全部の時間を使ってください。神奈川県は第1次が経験小論文2題のみ、香川県は書類審査と面接だけです。
▶ 自分の年齢と職歴で受けられる自治体は、受けられる自治体診断(無料・登録なし)で確認できます。
▶ 方式ごとの具体的な進め方は、SPI3対策とSCOA対策にまとめました。
この集計の前提
- 対象は、当ブログが受験資格データを収集している全国67自治体(都道府県・政令市の社会人枠/経験者採用の代表区分)です
- 各自治体が公表している令和8年度の受験案内を、2026年8月に1件ずつ開いて確認しました
- 集計から外した5自治体の理由は次のとおりです。岩手県は公務員経験に限る区分のみ、静岡県は職務経験者採用が技術系7区分のみ、沖縄県は心理・社会福祉・土木・建築・農業土木の5職種のみ、京都府は総合土木のみ、宮城県は技術系と保健師のみで、いずれも令和8年度は一般事務・行政の募集がありませんでした
- 67自治体すべての受験案内に目を通したうえで、事務の枠がある62自治体だけを数えています。母数が違うと割合も変わるので、他サイトの数字と比べるときはご注意ください
- 当ブログの集計記事は、いずれも母数を62自治体にそろえています。あちらは集計した時点で浜松市の受験案内が未公表だったこと、岩手県を専用の経験者枠がない自治体として外していたことによる差です。テーマごとに集計時点と条件が違うので、記事をまたいで数字を足し引きしないでください
- 同じ自治体に春・秋など複数の枠がある場合は、代表となる1区分で数えています。枠が違えば方式が違うことがあります
- 方式は年度によって変わります。実際に受ける前に、必ず志望先の最新の受験案内でご確認ください
おわりに
「公務員試験=数的推理」というイメージは、一般枠の話としては正しいと思います。ですが社会人枠では、事務の枠がある62自治体のうち6件にしか当てはまりませんでした。
働きながらの勉強時間は限られています。その時間を、自分が受けない試験の対策に使ってしまうのがいちばんもったいない。まず志望先の方式を確認して、それから問題集を選んでください。順番が逆になると、半年分の努力がずれます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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